別れられない関係

「別れられない関係」と書くと、少し後ろめたい不倫関係をイメージされる方も多いかと思います。ワイドショーでは「不倫ネタ」が流れない日は無いくらいありふれた話題ですが、いつの日も人々の興味を惹くのは「他人(ひと)の道ならぬ悲恋(ひれん)」よりは、「他人(たにん)の不幸」のようです。

自分はもう結婚してしていて、子どもがいて、家庭も上手くいっている奥様なら、「既婚のイケメン俳優さんと独身美人女優さんとの不倫問題」は、「不倫は良くないよね」と言いつつ、「私だって、もう少し若ければな~」と、ちょっと羨ましく感じるものです。

ご主人との仲が上手くいっていれば、「でも、他人は他人、自分は自分。今が幸せだからOKだよね!」と、「ただの美男美女のゴシップ話」として聞き流すことが出来ます。

お昼のワイドショーで見た内容を仕事を終えたご主人の夕食の準備をしながら、まるでボクシングのジャブのように「うちは浮気したらこうだからね!」と、エアーパンチを打つマネが出来るような奥様なら、そのご夫婦は長続きします。

反対に夫婦仲が上手くいっていない奥様ほど、不倫や他人の不道徳を激しく攻撃します。「自分に甘く、他人(たにん)に厳しい」タイプは、過去に元彼に浮気や、ご主人に不倫をされて傷付いたことがある女性に多くみられます。

イスラム圏の国では、妻が不倫をすると死ぬまで石を投げつけられる刑罰があります。民衆はまるでお祭りに参加するように正義を振りかざして笑顔で罪人への投石を楽しむそうですが、流石に日本人女性はそこまでストレスが溜まっていないでしょう。

どちらかと言うと「あの人(夫)には何を言ってもしょうがないから」という理由で、既に夫婦間での会話がほとんどない家庭の方が、あっさり離婚に至るケースが多いです。

家庭内で会話があるか無いかは、一見たいした問題ではないように思えますが、人間はテレパシーでもない限り自分の気持ちは相手には伝わりません。

どんなに相手のことを腹立たしく思っていたとしても「~が許せない」「~なところが嫌い」と言う言葉ではなく、「~だと助かるんだけどな」「~の方がが好きだな」と、一度脳内で変換してから声に出したいものです。

今や3組に1組が離婚する時代ですが、世の中には、神様が引き合わせたのではないかと思うくらいのベストカップルがいます。それがパーソナリティ障害を持っているもの同士のカップルです。

直接のクライエントさんでは無いのですが、話を聞いていると「あ~、この2人は10年経っても絶対に別れないな」と感じるようなベストマッチングのカップルに出会うことが有ります。

それがパーソナリティ障害の中の、境界性人格障害の女性と自己愛性人格障害の男性のカップルです。理由は、この2つのパーソナリティ障害が凸と凹のようにぴったりと当てはまるからです。

例えば、境界性人格障害の女性がいます。境界性人格障害の特徴の1つに、他人(ひと)から見捨てられることに対する極度の不安があります。

恋人が別れ話をしようものなら、「あなたと別れるくらいなら今すぐここで死んでやる」とばかりに自殺未遂をやりかねません。感情がとても不安定で行動が衝動的です。

この境界性人格障害の女性のお付き合いしている相手が、自己愛性人格障害の男性だったらどうでしょうか?

自己愛性人格障害の男性は、自分しか愛していないナルシストなので、自分の素晴らしさを認めてもらいたいが為に頻繁に女性をナンパします。ただしナンパして手に入れた女性を愛することはありません。相手のことを平気で利用します。

デート代は相手持ちが当たり前、お金は貸してもらって当たり前、女性に尽くされて当たり前、「なぜなら僕はイケメンだから…..」です。

女性は本当はお金を貸したくないのです。「貸したってどうせ返って来ない…..」と分かっています。では、なぜお金を貸してしまうのでしょうか?

お金を貸す人の心理は、「断ることによって、その人に嫌われたくないから」、「その人との縁を切りたくないから」返して貰えないかも知れないけど、別れたくないから貸してしまうのです。

自己愛性人格障害の男性は、自分のことが大好きで常にイケメン王子様を演じています。女の子にカッコいいと言われ続けないと元気がなくなってしまう病気で、身なりと前髪には常に気を使っています。

カッコ付けるには、お金がかかります。お金は女の子が貸してくれて当たり前だと思っています。「だって彼氏がカッコいい方がお前も良いでしょ…..」です。

イケメン王子は、甘い言葉をささやき、まめにLINEをし、車で送り迎えを申し出、世話をして、女性を落とすまでは真剣に相手に尽くします。しかしそれは自分のカッコよさを認めてもらいたいと言う自己愛を満たすためなのです。

イケメン王子様はマメに愛をささやいて優しいので女の子にモテて当たり前です。しかし、どんなにたくさんの女性から愛されたとしても自分のことだけしか愛していません。

彼女からどんなに愛されていようが、お金を貸してくれないなら(利用できないなら)「じゃあ、別れる」と平気で言えるのです。

境界性人格障害の女性は、親のように全面的に自分の生活の面倒をみてくれる男性を求めています。いつでも付き合い始めのように深く愛されていたいのです。高価なプレゼントを贈ったり、お金を貸すことによって彼に見捨てられたくない(彼との縁を切りたくない)と言う強い感情があるので、彼につくし、愛を訴え続けます。

境界性人格障害の「面倒を見てほしい、男に縁を切られたくないからすがり付く女性」と、自己愛性人格障害の「自分はイケメンだと認められたい、だから女を利用したい」男性のカップルは、別れる理由が見つからない究極のベストカップルです。

別れようとして大喧嘩して警察沙汰になったとしても、時には別れたくない女性が自殺未遂を繰り返しながら、それでも女性の「あなたでないとダメなの」の言葉に、お互いの魂がまた惹きつけ合って、一生離れられないケースが多いのです。